20121226

Gattaca (1997)




今回の映画は全くイギリスでもない、文学でもない、1997年の「ガタカ」というSFです。
あ、唯一「イギリス」ちっくな部分と言えば、ジュード・ロウが出てくるところかしら。かっこいいね。妙に嫌な感じの役がぴったりくるM字ハg彼ですが。…これでもほめてます。

このお話は"not-too-distant future"に設定されています。「そう遠くもない未来」。この映画ができてから15年は経ってますが、遺伝子でその人の将来がある程度予測できてしまう時代までは、もう少しかかりそう。





なにさま映画評 →→→→→さんでとてもわかりやすく解説されていて、こちらを読んで「うむうむ、ふむふむ」と思いながら読まさせていただきました。宇宙である意味、海のシーンの意味。他にもいっぱいガタカに関して解説されてるサイトさんはあるので、あまり今日は書かない!


この映画を観終わって思ったのは、なんだか爽快感がない。ちょっともやもやしたものが残ってる感じ。確かに、ヴィンセントは彼の夢を果たして宇宙へ飛び立つ。けれど、それで感動的な音楽に乗せられて、「あ~よかったね!!!」よりは、これってどうなの?と思うんだ。彼は30で死ぬだろうと生まれた瞬間宣告されて、けれど今のいままではなんとか生きてる。けれど、宇宙に行ったらどうなるだろう?もしかしたら土星に着く前に、今度こそ死んでしまうかもしれない。彼には将来って言うのが手さぐりで、常に体当たりしながら生きていかなければならない。しかもナレーションに、"We came from the stars so they say, now it's time to go back"(「俺たちは宇宙の星から生まれたと言われているけど、いよいよ戻る時がきた」)というセリフがあるけど、ここでもやっぱりヴィンセントが死んでしまうことを暗に示してるのかも。だからなんだと思う、安心してよかったねって言えないのは。hopeがない。


もちろん、ジュード・ロウ演じるジェローム・ユージーン・モローの最期も、そのもやもや感を助長させる。なんで彼は死んだのか?これも散々議論されてるとは思うんだけども…

彼は優等な遺伝子を持ちながらも、得意の水泳では常に2位という結果に歯がゆさを感じていた。そんな劣等感から、彼は自殺をしようと車の前に飛び込んだ。けど、死ぬことはできなくて、水泳もできない、足が使えない生活を送るはめになった。でもね、彼はきっとやけになって自殺を試みたんだと思う。というのは、彼が本気で死のうと思ったら未遂で終わることはないだろうから。周りから何の期待もされない自分になりたいという、ある意味現実逃避のような形で、彼は足を犠牲にしたんじゃないのかな。

ポスターに書かれてる"There is no gene for the human spirit"からもわかるように、どれほど科学が発展して、この映画の世界のように遺伝子がすべてという時代を迎えても、人間の精神だけは操作することができない。ユージーンには優等な遺伝子を持ってる者としてのプライドはあるけど、自分の弱い精神では十分に生かせることはできないと思って、第三者に自分の遺伝子を売ってみようと思ったんじゃないかしら。それは本当に自分の遺伝子は優等なのか、それとも自分が弱いから生かしきれないのかを確かめるという意味で。そこで印象に残るのは、ユージーンが刑事さんに「癪にさわるんだろ?俺にあんたが夢見るしかできないことができるってことがよ!」って言う場面。彼は、自分の遺伝子が優等である確信を得たからこそ言えるセリフだと思う。

ただこれは、この映画の中で二人いる「ジェローム」のアイデンティティに関わる部分だし、それ以上は深くなるから追及しないけど、とりあえずヴィンセントとユージーンの二人が居て初めて1つの完璧な個体となる(元々仲介者もお前たちクリソツだよ!!と言ってたもんね)。

で、ユージーンは死ぬわけなんだが…。
ヴィンセントがユージーンの代わりに彼の遺伝子で目標を達成したから、だとは思うんだけども。「ジェローム・モロー」というアイデンティティが完全にヴィンセントに持っていかれてしまったことで、ユージーン本人は抜け殻のような状態。アイデンティティを失くした彼は生きていく意味はもうないと思ったから自殺したんじゃないのかなと思った(ちょっと暗すぎ?笑)。焼身自殺という手段も、確かにロケットの炎を映すことによって私たちは理解するけど、ヴィンセントが度々言及する「原子に帰る」と同じように「塵に帰る」的な意味合いがあると思いました。彼なりの宇宙への還り方なのかな。

(ちなみにここのベストアンサーで感銘を受けたのが、「最後にユージーンのメダルが炎によって金になる」という部分。ほわーそういうことね、と。素敵だ。)


ただ気になるのは、ヴィンセントに"you just have to fill in the last two years of [Eugene's] life"と遺伝子売買の仲介者がいってること(スクリプトを見てるので、実際映画でそれを言ってたかは忘れましたが…)。これが本当だとしたら、ユージーンは遺伝子学的な余命があと2年しかないということになって、解釈が変わってくると思うんだけど…。

最後に、ジェローム・ユージーン・モローの名前なんだけど(Jerome Eugene Morrow)

あー、ジュード・ロウかっこいいわー。

Eugeneはわかりやすいね、gene(遺伝子)って言葉が入ってる。ジェロームも、genetics(遺伝子学)と同じ"ジェ"の響きがあるなーと思うのは深読みしすぎかな。実際は「聖なる名前」という意味らしいです。モローは、近い将来とか、朝という意味(tomorrowのmorrowと同じ)。なんとなく、ここだけで映画のテーマがわかりそう。



あとは、ユマ・サーマンの無機質感がかっこいい!黒白で、ガタカのストイックさを示すような衣装と、無駄のないオールバックのおだんご。冷たい、クールなまなざしと情熱的な赤い唇。建物とか小物とか(下のヴィンセントが読んでる本とか)にも言えることなんだけど、レトロ感と近未来感の融合がたまらなくいい。




★★★★☆
Dir. by Andrew Niccol (アンドリュー・ニコル)
Music by Michael Nyman
Cinematography by Slawomir Idziak


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